私の理解が正しければ、新生児聴覚スリーニングの目的は、早期に聴力障害者を発見して、早期にトレーニングを開始することである。早期トレーニングを始めれば、よりその障害への対応が可能となり、場合によっては言語聴覚士によるボイストレーニングなどが早期に開始される。そこで、この聴力スクリーニングを新生児に行い、早期発見に努めよう、という趣旨であったと理解している。

当院では、開院以来この手のスクリーニング検査は、全員施行としている。施設によっては、有料で、希望者のみに、としているところもあるが、スクリーニング検査なので、当院が負担する形で全員に施行としている。ここまでは私の理解の範囲内である。

私の理解を超えていたのは、予想以上にスクリーニング検査で引っかかる割合が高いということである。他の新生児のスクリーニング検査(先天性代謝異常やポンぺ病)などに比べると、異常が指摘される頻度が高い。当院で毎月40名前後新生児が生まれるが、少ない月は0のこともあるが、多い月には4-5名以上が指摘される。(というより、これは以前からそういわれていた当たり前の事実であり、だからこそ聴覚スクリーニング検査をすべての新生児に施行しなくてはならない、というような話をどこかで聞いた)

この検査は、ある音刺激に対する脳の反応で判断する、というものであるから、条件が悪ければ以上と判断される場合もあるであろう。また特定の周波数であるから、すべての周波数に対するものではない。その結果、当院で異常と指摘されても、精密検査を行うと正常の反応であった、ということもある。というか、どちらかというと、正常と判断されることが多い。

しかし、中には本当に聴力障碍のある場合も見つかるわけで、そうした場合、親としてはつらいことだであるが、そのあとの対応を考えなくてはならない。これはやはり親だからできることであると思うが、親としてその事実を受け入れ、そしてそのあとの対応をおこなうこととなる。

さて、少し話を戻す。当院で聴覚スクリーニング検査を行って、正常であれば正常と話しをすればいい。問題は異常の場合である。せっかく生まれた我が子に、異常があるといわれると親としては、と気持ちが動揺される方もいらっしゃる。しかし、ここで説明ができないと、次の行動に移れないので、私自身も気持ちを整理してできるだけわかりやすく説明する。

”ある音刺激に対する反応が片側あるいは両側でない。これはかならずしも、音が聞こえないとは限らない。機械の調子が悪かった、あるいは本人がその時深く眠っていた、などのこともある。しかし中には本当に音が聞こえないお子さまもいらっしゃる。”

まずここまでをうまく説明するのが大変である。中にはもう1回やってみて、といわれる場合もあるし、この時点でお母様が泣き崩れてしまう場合もある。

この検査はスクリーニング検査という性格上、仮にもう1回やって陰性(正常)と判断された場合、どちらの結果を優先するのかということになる。検査の性格上、見落としが怖いので、異常と判断が1回でもあれば異常と判断せざるを得ないのである。

お母様が泣き崩れた場合には、立ち直るまでまって、その時点で再度根気よく説明する。そして次の段階である、精密検査の話となる。熊本県での精密検査の機関は、熊本大学病院と熊本県福祉総合相談所の耳鼻咽喉科である。ここでの検査をお母様に予約してもらうこととなるが、クリニックの立地上熊本県福祉総合相談所のほうが近いので、そちらを紹介することが多い。

熊本県福祉総合相談所は県の施設であり、なぜこんなところにその精密機関がと思わないでもないが、これはそうした熊本の制度なので、そのまま話を勧める。

問題は、その精密検査の時期が生後3か月ごろになるということである。異常があるかもしれないといわれれば、少しでも早く検査をしたいというのが親の気持ちである。しかしあまり早く検査をしても正確な判断ができないので、児の成長をまって、ということである。難聴という判断を下すことの難しさと、そしてそのあとのトレーニング開始時期のとの兼ね合いで、この時期となったのであろうと、理解している。

とはいえまたこの時期を説明することもなかなか難しい。

また里帰りの場合、その検査の時期には元の居住地域に戻っているので、その地域の施設を紹介となる。しかし、各地域にはそれなりのルールがある。で、私としては、各地域の受診可能な施設を探して、そちらに電話で紹介して、そちら宛ての紹介状を書くということにある(これは万一ボイストレーニングが始まる可能性を考慮して、できるだけ居住地域での施設を紹介するように心がけている)

本当なら、精密検査の可能な時期のスクリーニング検査が一番望ましいとは思う。検査をやって異常なら精密検査をすぐ、と。しかし生後3か月時点でそうした検査がきちんとできる機会が得られるかというとなかなか難しく、結果としてタイミングを逸するであろうから、出生直後にやることとなったのであろう、と今になって改めて理解する。

こうしていろいろと考えると、この検査は、その目的のために、生まれたすべての新生児に施行すべきであろうし、その検査の感度は少しでも高いほうがいいであろうとも理解する。そこら辺の理解が十分でないと、結果として有料のスクリーニング検査となり、施行率が低くなり検査から抜け落ちてしまうことも予想される。

しかし検査機器が決して安いものではないだけに(機器自体もそうであるが、ディスポ製品も含めて)前例施行に抵抗のある施設もあるのかもしれない。

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裏庭の昨日の写真である。この写真で判断できるように、実はこの場所は、冬場は建物の影となることがおおい。つまり日の当たりやすい場所と当たりにくい場所がある。そして、この場所は風の強い場所でもある。そうしたことを考えながら、庭の再構築をすすめたい。