当院で無痛分娩を行う場合、患者様が希望される場合と、当院スタッフが勧める場合がある。

過去のお産がとても痛かった、きつかった、眠れなかった、などの経験のある方は、次回は無痛で思われるようで、当院で初診時に無痛分娩希望と問診票にあることが多い。よほど大変であったのであろうと思う。

本来お産は、女性が自然の摂理に従い、女性に託された次世代の子供を誕生させるという大切な行為である。であるから大変であるのは仕方がないとしても、やはり眠れないこと、先が見えない状況で、いつまでこの陣痛が続くのか、というところが大変なところではないか、と私は見ていて思う(私は男性なので、出産を経験できないので)。

あと1時間で生まれるといわれたら、何とか耐えられるかもしれない。でも、その1時間が過ぎても生まれる気配がなく、さらに痛みは続いて、いつまにやら無限に続きそうで、と。それでもまだ眠れればいいかもしれないが、陣痛で眠れない、と。

その結果、お産の時には疲れ切って、その失われた体力の回復に数日を要する。正気に戻ったときにはもう退院、と。でも退院するときに習得すべきいくつかの練習が行えないと、退院してからも大変な日々である。

そうした経験をお持ちの方は、無痛にすることで、夜もしっかり眠って、食べるべきものをきちんと食べてお産に望めると、産後のスタートもらくであると思う。(個人的には、つかれたときこそ、きちんと食べて、眠ってが大切であると思っているので、そうできないお産は大変であろう思うし、最後の最後に力が振り絞れるように、食べて寝なさいと私は妊婦様にすすめている)

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だから、疲労困憊して、まだ先が長そうな方には無痛分娩をすすめる場合がおおい。また夜来て朝までに生まれる場合はOKであるが、夜来て朝が来て生まれなくて、そしてまた夜が来て、という場合にも無痛をすすめる場合が多い。また、根本的に分娩や痛みに対する不安の強すぎる人は、無痛のほうがいいかもしれない。痛みがないと思うと精神的に余裕も生まれるようで・・。

また、無痛分娩=硬膜外麻酔可能状態であるから、万一帝王切開を考慮しないといけない場合にも無痛をすすめることがある。この場合、その万一の状態になったとしても、すでに硬膜外チューブが留置されているから、最短20分程度で帝王切開を始めることができる。

なお、当院での無痛分娩は、いつでもOKであるので希望すればいつからでも行う。ただし、穿刺する行為にどうしても時間がかかるし、またチューブ留置後効果発現まで20分程度時間がかかる。さらに言うなら、穿刺する場所によっては、おしり付近から聞いてくる場合と、お腹から効いてくる場合がある。そのため、お産の進行が予想以上に速いと、麻酔効果発現までの時間が足りず、ここが痛い、ということになる。

また、時にせっかく無痛にしても、その後陣痛が遠ざかってしまう場合がある。そうなると、無痛分娩のために背中に留置したチューブが邪魔となるし、シャワーも浴びられない。なので、そうした場合には薬剤で増強する場合もある。でも、チューブを除去して、いったん退院という場合もある。

こうやって振り返ってみれば、無痛分娩にもいいとこともあるし、悪いところもある。そしてその無痛を行う状況によっても、その効果が最大限発揮される場合もあれば、あまり効果の無い場合もある、という当たり前の事実である。ただし、これはある程度の経験を積まないと理解できないかもしれない。

また私仁はそれなりの数を摘んだつもりであるが、でもまた数を積み重ねることで、今とはまた違った結論にいつの日か達する可能性もある。つまりここにまとめたことは、当院での過去10年での経験からということになる。

ただ、どんなに用意をしても、勉強をしてもし過ぎることはないし、予想以上の何かはいつか起こるかもしれない。いつか何か起こるかもしれない、と考えて、自分にできることを誠実に見極め、可能な限りの備えをするという基本的なスタイルを維持することが最も大切であろう、と思っている。

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写真は数日迄の朝日が出るまでの状態である。東の空が茜色にあかるくなり、よくみると明けの明星もみえる。(この写真の解像度ではわからないかもしれない)

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これが明星であるが、これだけ切り出しても・・。

つまり明けの明星と、夜明けの雰囲気は、やはり実物を眺めないと味わえないのである。