当院での出産は、基本的に分娩台での上で、仰向きに寝て、足を広げて、おしりを分娩谷の端っこにかけて、という”人”の字のスタイルである。施設によっては、フリースタイルや、立位、側臥位、そして最近はお勧めできない水中出産などがあるけれど、現在の産科診療に求める医療の安全性を考慮すると、現在のスタイルが望ましい、と思っている。そのためフリースタイルその他を希望される方は、他施設を受診いただく、ということにしている。

つまり、この分娩スタイルには、それなりの医学的理由があるので、これが守れないと時に難産となることがる。出産時の痛みに我を忘れて叫ぶくらいであれば、まそれはしかたがないが、おしりが逃げる(上に上がっていく)、あるいは足が閉じる、という形になると、結果としてお産をすすめることができないので、そうしたときは妊婦様に強くお願いして、ああして、こうして、と誘導することになる。

さて、それでようやく赤ちゃんがでた、と。しかし赤ちゃんが出てからが、また二つの山がある。まずは胎盤がキレイに出るか、そしてその際の出血はと。基本は分娩終了後30分から60分は待って、胎盤の排出を待つ。通常は胎盤がはがれて、その後に出血が増えるのであるが、胎盤が残っていても、出血が多い場合、急いで胎盤を娩出して、原因検索をすすめなければならない。

胎盤が無事に出て、出血量も多くなければ、落ち着いて診察をして、子宮の収縮状態、会陰切開部の裂傷部を確認して修復というjことになる。出血が多い場合には、子宮からか、裂傷部からの出血を早期に確認して素早い対応ということになる。

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たぶん、幾つお産を経験しても、この産後の診察が一番難しい。出血の原因、裂傷の程度を素早く判断して、手順よく対応することがなかなか難しいのである。短い時間で適切な対応が要求されること、視野を妨げる出血、千差万別な傷の状態、・・と幾つも難しい条件が重なる。そしてその際に痛みが強いと、これがまた大変である。

その点無痛分娩の方の場合(痛みがなくて、不安が和らいでいる人)ははるかに診察がしやすいし、こちらも落ち着いて対応できるからありがたいのであるが、そうでない場合はやはり大変である。まず、痛み止めのために局所に麻酔薬を皮下注するわけであるが、これがまず痛い、おまけに血流の豊富な場所や、膣会陰部が浮腫(はれいてる)状態になっている場所はなかな、麻酔が難しい。しかし、麻酔をせずに縫うわけにもいかないしと・・・。

また私の年齢は今年で57である。年齢的な目の問題があり、私はメガネ愛用者であるけれども、この眼鏡はやや特殊で、近場用のメガネである。つまり本を読んだりパソコンを使用する程度の距離に重点を置いている。そのため、会陰部の縫合でよく見なければならない場合には、実は眼鏡を外して、顔を近づけることとなる。

よく見て、そして触って、ダメージの状態を確認して、それから修復開始である。診察においては、御尻(直腸)からの診察が必須であり、痔がでていても、この場合は仕方がない。

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縫合は、合成吸収糸を用いる。産科で用いる糸は、比較的早く解ける糸(4週間程度)を用いることが多い。当院ではPDSを縫合に用いることはないので、基本的にしなやか糸で縫うこととなる。しかし、PDSではないのでこの糸は”より糸”である。つまり、細い繊維をよって太くした1本の糸である。ということは、糸の中に隙間があるのでる。(その点PDSであればそれはない)

会陰部の縫合にこの糸を使う場合、一番気を付けるべきは、この糸に感染が生じないか、ということであると私は思っている。深く塗った糸は、表面に出ていることはないので感染のリスクは低い。しかし会陰部の周囲の皮膚を縫っている場合、皮膚に面していること、産後に悪露用のパッド使用していることが多いこと、などよりどんなにウォシュレットを使用したとしても、会陰部の縫合した糸に感染が生じることがある。

ちょうど抜糸するころ(産後4日目)に糸がら黄色い汁がにじんでいる、あるいは抜糸後の穴から汁が出てくる場合がある。これは基本的に糸に感染が生じていることの裏返しである。でも、基本はそうした糸を除去することで感染のリスクが大きく減る。

問題はその間線の生じた糸がそのままそこに残っている場合である。この場合、とんでもないことが起こる可能性があるけれど、私の場合は基本的に抜糸するので、それはないこととなる。

しかし、こんなに書いていても、時に傷がきれいに修復できていないこともあるので、その場合は、退院後外来でお付き合いいただくこととなる。

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写真は裏庭の日日草である。日日草は、熱帯地方の低木であると聞いた。そのため日本では温度が14度以下に下がると枯れてしまうので、1年生草木となる、と。そこで、この紫とピンクを1本ずつ鉢に移して、年越しをさせてみようかな、と思っている。

ピンクは、色が少しまだらで、病気が出ているのかもしれないけれど・・・。

台風が過ぎて、天気が良くなったら、と思っている。