現在は飽食の時代であり、ファーストフードからさまざなスナック菓子まで容易に手に入る時代であり、その結果としてあちこちで肥満が問題化していると聞く。沖縄でも、トンガでも、肥満が問題となりつつある、と。

私自身も実は肥満である。身長176cmで体重85kgとなれば、BMI=85/1.76/1.76=27である。BMI25以上が肥満の定義であったような気がするから、立派な肥満である。そういえば、先日腹部超音波検査時に、内臓の脂肪化が著明で、その結果内臓のコントラストがついて、腹部超音波検査がしやすいといわれてしまった(悲しことであるけれど・・・・)。で、ようやく一念発起して、糖質制限を始めて、いったんは80kgまで行ったのであるが、今は少しリバウンドの状態である。できれば76kgまでお落とせれば、BMIが25を切るので、肥満の定義から外れることができる。

いま一度頑張らねば、と思っているし、そしてそれが継続できなければならない。流行の継続可能な支援ということである。着々と年を重ね、老化の文字がちらつきだしている今、自分自身のことを自分できちんと行えるために、そして痴呆をさけるためにも、体力と知力の維持を、そのためにも肥満は突破したいものである。

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さて、この肥満の問題は、私の問題だけではなくて、やはり診療においても問題となることでもある。というか、安産のためにはやはり適切な体重コントールが必須であると私は思っているし、実際母子手帳の中にも適切な体重維持の記載項目がある。

体重の過増は、やはり妊娠出産のリスクを増すし、難産や帝王切開の頻度が増えるとされている。なので、外来では妊婦健診の際の大切なチェック項目である。しかし誰でもそうであろうけれど、太ったといわれのは嫌だし、ましてやなんで食べているものを人様の目にさらけ出さねばならないのか、という想いの方も少なくないことであろう。

しかし、体重に関してはやはりその場の快楽(食べるときの至福)の最後の審判がお産であると、私は心の中で思っている。太っていても、つるっと生まれる人もいることは事実であるけれど、産むまでが大変な人もいる。ま、必ずしも太っているから難産になるわけではないとも思うが・・・。

でも、ちょっと余計に背中にお肉がついていて(皮下脂肪が厚い)、そうした方々から、痛いので無痛分娩希望といわれると時に困る。無痛分娩のためには硬膜外穿刺と呼ばれる手技が必要であり、そのためには背中に針を刺さなければならない。針を刺すためには、その背中の背骨の隙間の部分をメルクマールとして穿刺するわけであるけれど、その隙間がなかなかわからないのである。

ただでさえ妊婦様でお腹が大きいのに加えて、陣痛が来れば、痛くて姿勢を取ることが難しい。そこを何とかなだめすかして、背中を丸くすように膝を抱きかかえる姿勢で横になってもらって、腰骨のあたりの骨と骨の隙間をみつけて、そこに針を刺すのである。運よくはいればいいのであるが、運が悪いと何回も穿刺の行為を繰り返すこととなり、妊婦様にも申し訳ないのである。でもこの針が入らないことには麻酔はできない。

また産後の縫合時にも苦労することがある。外側の傷はいいけれど、膣内の傷がある場合、その傷を確認するために膣鏡という硬性鏡を必要とする。で、これは通常二枚刃であり、上と下から開く。で、お肉の厚いかたであると、この二枚刃の横のあいた部分から膣のお肉が飛び出してくる。その結果中が良く見えない、という事態になる。これもまたトホホの話で、いったいどこに傷があるのよ、出てきたお肉をよけながら悪戦苦闘して、なんとか縫合を行うことになる。

BMI30以下でこの苦労であるから、高度肥満(BMI30以上)であれば、お産なんてとんでもない世界であろうと思うし、私にとっては禁断の世界なので、BMI30以上の高度肥満の方には申し訳ないけれど事情を説明して、麻酔科と小児科と産婦人科のある総合病院での出産をお願いしている。

ということで、太らないに越したことはないけれど、自分の体重でさえも維持できない私であるから、妊婦様が守れなくてもそれはそれで仕方がない。妊婦健診でも基本的には適切ない体重を維持するように再三お願いしているつもりである。でもどうしても太ってしまえば、それは仕方のないことであるけれど、その太った分の責任は自己責任とリスクの増大ということで了承いただければ、と願う次第である。

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写真は蝋梅と白梅。蝋梅は、下を向いて咲くので、下から写真を撮る。なので、青空が背景となる。一方白梅は、お日様に向かって咲くので、上から写真を撮る。なので、地面がうつる。