当院では、開院以来無痛分娩を行ってきた。2007年の開院以来、2018年末までの総分娩数5894件で、その中で無痛分娩が2546件で約43%である。当院での無痛分娩は、硬膜外麻酔による無痛分娩であるので、単純に考えれば、2546回の硬膜外麻酔を施行したことになる。

また、通算の帝王切開数が926件(2007-2018)であり、これが約15%。当院の帝王切開においては、9割がたは硬膜外麻酔によるものであり、1割程度が脊椎麻酔であるとおもうので(此方でおおよそ800件として)計3300回前後の硬膜外麻酔を行ったこととなる。これが12年通算であるから、単純に計算すると、年間250件くらいの硬膜外麻酔実施というところであろうか。

硬膜外麻酔においては、当然ながら麻酔をするためには、硬膜外腔の穿刺という手技が必要である。具体的にいえば、妊婦様に横向きに寝てもらって、背中を丸くして姿勢を取ってもらって、私が腰骨当たりの腰椎の隙間を狙って穿刺する、という行為である。

私の場合、患者様に右を下に横になってもらって、腰椎の2番目と3番目、あるいは3番目と4番目の間を右傍側からアプローチしている。最初に背中を消毒して、局所麻酔薬を注入した注射で局所麻酔を行う。次に18ゲージの硬膜外穿刺針でロスオブレジスタンス法を用いながら穿刺する。

運が良ければ1発で入るわけで、入っていくときにい感じで手ごたえの変化があり、あ、入った、とよくわかる。で、それから留置のためにチューブを挿入して、外針をぬいて、チューブを固定して、体位を仰臥位に戻して、血圧を測り、麻酔薬の投与開始となる。

手順としてはこれだけであるけれど、なかなかうまくいかない場合もある。2番と3番の間がうまく穿刺できず、3番・4番目に挑戦して、と。場合によっては、また2/3番目に戻ることもある。

私から穿刺される妊婦様にとっては、いくら麻酔をされてるとはいえ、目に見えない背中を刺されることへの不安と恐怖があると、やはりどうしても背中が縮こまったり、逆に反ってしまって、ということでやりにくくなることもある。ここは、ある意味、私と患者様とそして介助するスタッフの共同作業である。ここがうまくいかないといつまでたってもチューブの留置が出来ない。できなければ、麻酔もできない、そしてその間にお産が進むと、もう間に合わないこともある。

ただ、様々な条件から、どうしても私がうまくできない場合もある。そうした場合には、専門の麻酔科医に硬膜外穿刺をお願いすることとなる。年に10回程度はそうしたことがある。

ということは、年間250-10で240回ほどは、私が硬膜外穿刺を行っているということでもある。ちなみに、当院での無痛分娩は、希望されればいつでも穿刺することとしているので、日曜祭日夜間いつでも、私が対応している。数をこなしたことで、私自身もある程度の方であれば、穿刺可能であるという自信もついた、という次第である。

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硬膜外麻酔のためのチューブを留置し、麻酔を開始すると、残念ながら様々な制限が生じる。まず、常時分娩監視装置の装着が必要となるし、場合によっては血圧計の装着も必要である。また背中に留置用のチューブが固定されているので、シャワーなども制限されている。

施設によっては無痛分娩のための硬膜外麻酔中の食事は制限されているけれど、当院では食事は制限していない。食べるものをきちんと食べて、そしてできれば眠ってもらって、十分に体力を温存してお産に臨んでほしいと願っている。

ただし、当院でダブルセットアップ(万一の場合に帝王切開予定)の場合には、食事は絶食とさせていただいている。

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写真は、当院2階の日当たりの良い吹き抜けの部分で、現在避寒している日日草である。1月のこの時期であるけれど、この場所なので枯れないし、何と最近1輪咲いた。このまま無事に育ってくれればいいけれど・・・。