医学という知識をもとに、医療行為を行っていると、時に不思議な現象に出合うことがある。痛いはずなのに、痛くない、と。あるいは痛くないはずなのに、痛い、ということがある。

それに対して、まだら効果という説明もあるけれど、やはりそこには人間の持つ頭の作用があるよう様な気がする。


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痛い、痛い、と叫びまくっている、一種の興奮状態のような状態である妊婦様が時にいらっしゃる。このような方方時に無痛分娩を希望されて、即効性のある麻酔を行うことがある。理論上、注射薬投与時から効果が発現しているはずである。

しかし一種の興奮状態にある妊婦様は、やはり痛いと訴える。どこもかしこも痛い、と。おかしいな、きちんと麻酔薬は入っているはずなのに・・・・。でも顔の表情は、叫んでいた時のような苦悶状態ではない。こうした時には、ちょっと待ってみることとする。本人の状態が少し落ちついてくると、あれ痛くないということにきがつくと、麻酔効果が確認できる、ということがある。

つまり、興奮した体の状態では、麻酔効果が出現していても、頭の興奮状態が収まらないと認識でない、ということかな、と。

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一方、産後の虚脱した状態(長時間の陣痛から解放され、ようやく出産に至った)で、私が会陰部の裂傷部分の修復を縫合という手段で開始することにある。その際に、痛くては縫合できないので、会陰部局所に局所麻酔薬を注入して、そのあとから縫うこととなる。

この注入時に、痛いといわれるのであるが、注入して局所に麻酔効果がでれば、あとは痛くないはずである。また、無痛分娩で、十分量に麻酔薬が使用されている場合にも、痛くないはずである。そうした際に縫い始めると、痛い、といわれて麻酔薬を追加することがある。しかしその場合、追加の局所麻酔を行う際には、痛いとの訴えはない。

もしかすれば、痛みを我慢されているのかもしれないが、と

ヒトは、ある一定以上の刺激があって、初めて痛いと感じる。その一定の境界値を閾値(イキチ)というのであるが、この閾値は、本来なら常に一定であるはずであるけれど、頭の状態によってはその閾値が影響を受けるということかもしれない。頭の中の神経伝達物質が豊富に放出されると、麻薬効果のようなものがあると聞いたような気もする。

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こうした事に影響を与えることとして、お互いの信頼関係というのもあるような気がする。つまり、お互いに信頼関係があれば、ある程度のことはお任せ状態であり、そうした安定した状態であれば、ちょっとやそっと痛くても痛くないと、感じるあるいは我慢する。しかし信頼関係がないと、疑心暗鬼の世界で、なにをされても痛い、触っただけで痛い、と。こちらの状態になるとちょっと大変である。

痛みということには様々な影響があり、そうしたすべてを瞬時に判断して適切な方法を選べればいいのであろうけれど、なかなかそこは難しい、というのも現実である。なので、出来る範囲から、と。ただ、対象の方の精神的安定を図ることも大切である。

写真は、クリニックに残っている数少なくサツキ、そしてバラ、最後に最近頂いたブラックサンダーである。これは過去最高の大きさであった。裏に一人占めしてはいけまん、と書いてあった。(スタッフと分けました。)

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