医療とは医療する側とそれを受ける側との一種の契約である、と聞いた。そしてこの契約はお互いの信頼関係をもとに構築されている、とも。なので、信頼関係が構築できない場合、医療と称して行われ行為そのものが疑われかねない。そして疑ってかかると、すべてのがうさん臭く見えて、そうなると医療という世界から離れてしまう。

逆に盲目的になんでもかんでも信用されてしまうと、どこかの宗教の様になってしまうような気もする。冷静に判断できればいいけれど、医学的な知識がない場合、どこまで正確に病態を把握できるかどうか、これはまた微妙な問題でもあるから、となれば、ある程度信用してお任せするしかないということもあるけれど・・・・。

でもやはり基本は、医療する側とされる側の信用関係であり、その信用関係を維持すべく真摯に対応することであろうと思う。自分なりに対応して判断できないのであれば、他者の判断を仰ぐべきであろうし、そうなれば紹介ということになる。


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当院のようなクリニックであれば、その信用関係の素となるのは、患者様と対応する医師一人一人の信頼関係が前提であろう。と同時に、付き合いやすさ、とか波長の合うかどうかという問題もあり、当院であれば私あるいは私以外の医師との信頼関係の構築と継続ということになる。

一方大きな病院で、複数の医師がいれば、どうか、と。病院自体の評判と実績がその病院の証である。その中の科ごとに中心となる医師が複数存在し、そうした医師を頼っていく場合もあれば、診療実績をもとに行く場合もあるであろう。しかし、当然ながら複数の医師がいるので、すべてが同じ技量ということはありえない。とはいえ、そうした病院であれば、個人で見るというよりチームで診るということになるからそれはそれで、ということでもある。

ただし、大きな病院であっても、中身は個人診療所の集まったような病院も昔あった、とふと思い出す。最近はガイドラインや様々な倫理委員会があり、そうした施設で個々の医師が独断で先行して何かをするということは難しくなったとは思うけれど、逆にそうなれば突出した名医が出現する可能性は非低くなるかもしれない。


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でも、やはり大きな病院であろうと、当院のような個人クリニックであろうと、基本はやはり信頼関係であろうと思う。信頼関係が成立しないと疑心暗鬼の世界で、そうなるとどんなに正しい医療であっても効果がないかもしれない。

患者様から転院の希望をいただくことがある。様々な理由で転院されるわけであるし、そしてそれは患者様の判断であるから、転院に対して当然ながら紹介状を書いて送り出すこととなる。患者様は転院先にそれなりの期待をもって受診されるわけであるが、施設も人も異なるわけで同じ医療が継続されるわけではない。その点は多分理解されたうえでの転院であろうと思うけれど・・・。

なので、当院に転院される場合でも、当院から転院される場合でも、転院するのであれば、転院先の施設を早期に受診して、自分の目で確認して、そして早めに転院してその施設なりのスタイルに早く慣れて、新しい良好な関係を構築することが、医療の一歩であろうと思う。

良好な信頼関係がないと、診療はうまくいかない。