おおよそ年間20名前後の母体の搬送、10名前後の新生児の搬送、というのが当院状況である。平成28年は、4月の熊本地震のため、特殊な搬送が増えたけれども、年間で考えると大体そうした状況である。母体にしても、妊娠中、出産直前、産後と状況が異なるし、新生児も状態は様々である。そしてまれなことながら、当院に救急車でお越しになる方も年に数名ほどいらっしゃる。
他施設へ患者を依頼する、ということは、当院では十分な対応ができないからだと、私および施設の技量不足といわれてしまうかもしれない、お叱りを受けてしまうかもしれない。
熊本地震で、熊本市民病院が高次医療施設から脱落し、ようやく昨年末にNICUと一部の施設だけ復帰したが、昨日は限定されている。その結果、熊本大学病院と熊本赤十字病院と福田病院が周産期関係の高次医療施設と稼働することとなった。しかし、これらの施設だけで、熊本市内の出産をすべてカバーできるはずもなく、万一仮にそうした事態となれば、病床はあふれ、他の疾患の治療不可となることであろう。となれば、ローリスク対応は一般の医療施設で、そしてリスクの高いものが高次医療施設へという流れになる。
もしかしたら、日本も将来アメリカのように、出産の施設がいくつかの施設に収れんされ、多数の出産を抱える施設だけ、ということなるかもしれないが、それは今ではないし、また今の現況では不可能であろう。今の熊本の状況からすれば、ハイリスクとローリスクの妊娠・出産・新生児とわかれ、ハイリスクは高次医療施設で、ローリスクは一般の施設でということでないと、たぶん熊本県内の状況は維持できないと思っている。
そこで、ローリスクとハイリスクの見極めが大変なこととなる。外来でリスクの高い方々は、早めに紹介という形としているが、時には緊急でその判断をしなければならないこともある。また、私自身の考えとして、事態が悪化してから送るよりも、その一歩あるいは二歩手前で搬送したい、ということもあり、そのように心がけているつもりであるが、その結果として高次医療施設に様々なお願いをすることとなり、結果として高次医療施設にご迷惑をおかけすることとなる。
ギブアンドテイクというわけではないが、当院としてできることは何であろうか、と考えないでもない。でもできることは、日々の診療を午後や土曜日に行うことで、そうした施設の救急外来の負担を減らす、あるいはローリスクの症例を減らすことくらいかな、と。当然ながら受診される皆様の意志を尊重して、ということにはなるのであるが・・・。
昨日(2月27日)は久しぶりに(たぶん8年ぶり)母体搬送を県外の施設に行った。現在の熊本県では対応不可ということで、県外の施設へ。そのため各方面に連絡し、消防隊にもお願いして、搬送した。危惧された事態も発生することなく、送り届けることができた。あとはその妊婦様の治療が成功することを願うばかりである。
写真は、寒波で変色した千両。もう駄目かと思っていたら、根っこの部分から新芽が出てきた。もう少し暖かくなったら、植え替えをしようかな、と。ただ、過去に千両万両は数本枯らしてしまったこともあり、植える場所と時期が難しいかもしれない。でも、中庭でこっそり咲いている万両のそばならいいかもしれない。ここにも、適切な判断が必要となる。