カテゴリ: 医療

 帝王切開という手術は、おなかを切って、子宮を切って、新生児を誕生させる手術である。しかし、その現実は、たぶん、新生児を出すまでの時間より、出して手術が終了するまでの方が長い。大体の手術は、手術の対象となるエリアに達するまでに時間がかかり、さらにその摘出あるいは修復に時間を要し、その最後の終了の部分は、それまでの時間に比べればはるかに短いのでは、と思う。


 帝王切開においては、状況によっては新生児を急いで出す必要があり、その場合当院でも10分かからないで新生児の誕生という場合もある。しかし、時間に予定手術であればそれほど急ぐ必要はないし、また既往に手術があれば、既往手術の影響を排除しながら手術を勧めるので、急がない場合、大体10分から20分後に新生児誕生となる。

 私が手術を教わった恩師の教えによれば、手術は原状復帰が基本である。そして帝王切開においては、よほどのことがない限り、余計なことはしない、というのも基本である。この基本を逸脱すると、とんでもない泥沼が待っているので、出来るだけ余計なことはせずに、と思っているが、それでもやはり新生児を出してからの方が大変であるし、時間もかかる。

 また、術者の技量と経験によるのかもしれないが、私の今の技量では、初回の帝王切開は40分前後、既往の帝王切開の術後であれば60-90分程度時間を要する。ということは、帝王切開の手術時間は、実は新生児が生まれてからの術後の対応に時間を要している、ということである。

2020-08-01 07.08.58


 新生児が生まれた後、まず胎盤を出して、それから子宮の切開部分を修復して、と。それまで新生児への栄養をつかさどっていた子宮であるから、子宮周囲の血流はきわめて豊富であり、血管は拡張している。なので、易出血性であり、十分に止血に留意して、縫合する。また、手術操作はきわめて愛護的に行うべきであり、この時点で急いでなにもいいことはない。確実にひとつづつ修復し、止血して、と。出血している場合、急いで止血すればそれだけ出血量が少なることはわかっている。でもこの場合、急いでやみくもにするよりも、確実に一つづつ積み重ねていくほうが私のスタイルなので、ここまでが大きな山場である。できれば、この過程が短いに越したことはないけれど、こればっかりは出たこと勝負という一面がある。なぜならどこの血管がどのように切れて出血するなんで、執刀前にわかるはずもないし、先に止血して切開するわけにもいかない。この工程に時間がどれだけ要するか、これが一つのポイントである。

 さて、一山超えて、あとはガーゼと機械の遺残のないことを確認し、子宮周囲の仕上がり具合を確認して、閉創ということになる。できるだけ余計なことはしたくないが、この癒着を残すと後々面倒なことになるとか、小さな卵巣腫瘍があると、・・・とちょっと面倒な事態になる。なので、必要最小限にと。

 そしていよいよ腹膜を寄せて、筋膜を縫って、脂肪層を寄せて、皮膚を縫って、ということになる。で、この皮膚の修復が予想以上に時間がかかるので、実はここが最後の山場でもある。意外とこの工程は時間がかかる。さっと塗ってしまえば、数分であるが、きっちりすると10分以上かかる。

 手術による侵襲は、その手術時間に関係していると聞いたような気もする。患者様への負担、そして60目前の私への負担を考えれば、手術時間は短いにことたことはない。しかし、ここで手抜きをして、術後の傷の状態が思わしくない、というのは望ましくない。決して手を抜くから短く終わるということではなくて、要領よくすれば短く終わるのかもしれない。でも、術後に多少なりとも生じるケロイド(瘢痕)をすこしでも少なくすることは、これは術者共通の思いであろうと思う。

 術後の状態やケロイドを少しでも良くするために、いろいろな工夫をこれまでい行ったつもりである。しかし時にその結果が予想外の結果をもたらすこともあるわけで(というか当院で手術を2回、3回と帝王切開を行うこともあるわけで)、いいこともあれば、悪いこともある。ここら辺はまだまだ考量すべきであると思っている。でも、そうなると最後の縫合で30分くらいかかるかもしれないな、などと考えつつ、ちょっと勉強してみることにした。勉強して、練習して、実際にそれが臨床の場で使い始めることは少し先になると思うけれど・・・・。

2020-08-01 07.08.26

クリニック周辺の稲穂も少し穂先が伸びてきた。そろそろ開花かな、と。朝外に出ると(今朝は雨が降っているので不可であるが)、穂先に朝露がついている。

コロナ渦でも月日は流れる。稲穂は成長し、そして緑の宝石の収穫も近づく。今年もお盆が明けてからしか手に入らないらしい。

熊本県内でも、コロナ感染のクラスターが発生しました。熊本市内ではまだですが、いつ発生が報告されてもおかしくない事態となりつつあります。そのため、当院でのコロナ感染対策を今一度徹底するために、現在スタッフと協議中です。

近日中にコロナ感染へのクリニック対策を公開します。外来、病棟、面会などの制限、そして不要不急の外出の控えること、マスクの着用などが基本となります。皆様の順守をお願いします。


2020-07-28 07.36.40

現在の手術は、内視鏡あるいはロボット手術が中心かもしれない。開腹手術は手術の基礎であると思っているが、術後回復のためには傷が小さい方がいいし、より安全で正確で、そして術後の回復もと考えて、このような流れにあるのであろうと思う。

しかし、帝王切開手術においては、どうしても傷が小さくはできない。なぜなら新生児を取り出すための穴が必要であり、そのためどうしても皮膚にそれなりの切開を加えなければならないからである。妊娠した女性の下腹部は、妊娠子宮により進展されているので、その時点で15cmくらい切ったとしても、術後に皮膚が縮むので(妊娠した子宮が産後の状態になるので)、創の長さは少し短くなる。

あまり傷跡は目立たせたくない、という思いは術者共通の思いであるから、皮膚を最小限の切開で済ませたい。しかし、あまり小さいと新生児を出すときにちょっと苦労する。創を拡げる機械(開窓器)をつかうかどうかでも変わるかもしれない。

当院(ウィメンズクリニックグリーンヒル)では、以前は開創(窓)器を使っていたが、思うところがあり、現在は使っていない。なので、新生児の頭を出すときにそれなりの長さが必要となる。


2020-07-26 08.33.53

さて、それでは皮膚をどの方向に切開するか、と。既往に帝王切開や開腹術があれば、基本的にその創の方向で切開する。初回の帝王切開であれば、基本は皮膚を横に切ることが多い。人間が腰をかがめたときに、下腹部にできる皺の部分を念頭に、そのラインを15cmほど横に切る。ついで、脂肪層をそのまま横に切って、筋膜も横に切る。腹膜は縦に切って、おなかの中に到達である。

あとは、子宮体部下部の前面の漿膜を切開して、膀胱を十分に剥離して、下部前面を横に切開して新生児を出す、ということになる。で、胎盤を出したあとは、切った切開線の修復(縫合)ということになる。

術後の感染予防、瘢痕予防、などから様々な手技や材料が報告されている。しかし、なじみのない素材を初めて使うより、なじんで安心できる素材を中心に使うことが多い。そこで問題となるのが、修復の素材として何を使うかということになる。

私個人の気持ちとしては、出来るだけ術後に創が目立たないようにと思っている。しかし、人間の皮膚の引っ張られる方向によって、傷に張力がかかると、どうしてもなおる過程で皮膚の縫合面が盛り上がってい来ることがある。そのため縦切開であると、やはりどうしても瘢痕となり、術後しばらくすると傷が大きく盛り上がり、赤くなっている場合がある。こうなると、盛り上がった部分が異常知覚で、かゆみがあり、知らず知らずのうちにかきむしり、それが刺激となって、さらに盛り上がるという悪循環になる。

横切開だから盛り上がらない、ということもない。横切開であっても、矢張り時には盛り上がることがあり、ふとめのミミズくらいになっている方にもお目にかかることもある。できるだけそうならないように、あれこれ苦労しているのであるが・・・・・。

でも中には、自分でもほろぼれするほど傷のきれいな人もいることは事実である。これ私がやったの?と思って患者様に聞くと別のクリニックということもないわけではない、また縦の傷であっても時にきれいに治っている人におめにかかることもある。

つまり、傷がきれいになるかどうかは、確かに傷の方向や術者の技量によるところもあるが、その帝王切開の受けた方の体質や状況などにも影響されるということであろう。

2020-07-26 08.33.57

それは帝王切開するときに、あとの傷のことを考えない主治医はいないとおもうし、みんなそれなりに考えて手術を執刀する。しかし、術後半年もすると、予想外の瘢痕に出合うこともある、という事態かな、と。

私自身もできるだけそうなるように、ささやかながらあれこれ考えているので、開業当初からすれば、いくつかの部分が変わったと思う。そしてこれからも傷を少しでもきれいにするためにあれこれ考えるけれど、結果としてやはり盛り上がった、という場合も帰途あることであろうな、と。ということは、妊婦様の寛容の気持ちを期待するしかないのかな、と。

2020-07-26 08.33.48

クリニックの2階においてあるハイビスカス。本来なら、青い空と緑と黄色の対比でといきたいが、売前線はまだ九州の北にあるようで・・・

最近ツイッターでの肖像権の話があった。で、ふと思った。当院では妊婦健診で、超音波検査時に可能であれば4Dで記録し、赤ちゃんの顔が顔らしく見えるようにした写真をお渡しすることがある。これは、いくつかの条件が重ならないとききれいに映らない。顔の前に手やへその緒があってもだめだし、顔と子宮の間に程よい羊水のスペースがないとだめだし、さらに言うなら顔が斜め上位を向いていないとだめだる。

これらの条件を、出来るだけ最適な条件になるようにあれこれすると、結構時間と手間がかかることは事実であり、なので、いつも4D写真を撮るわけではない。妊婦様から要望があれば、撮影に挑戦するが、条件が整わない場合、あれこれやってもできなくて、おまけに時間はかかるし、とあまり私にとってはありがたいことではない。しかし、皆様がそれで少しでもおなかの中の胎児を、自分の子供として認識でるのあれば、と挑戦することにしている。(ちなみに、妊婦様の要望の場合は、きれいに写真がとれれば最低限の料金をいただいているが、撮影できない場合料金はいただいていない)


2020-07-01 09.17.31

これは鑑賞には堪えないが、私の写真で、ご容赦いただきたい。で、私がこうやって乗せる場合、当然私の了承があるわけであるから、OKである。さて、それでは、仮に4Dの胎児の写真を撮って、スマホの待ち受け画面にして、これが私の赤ちゃんよ、と人に説明したとする。この場合、写真の肖像権は、胎児に属するのであろうか?あるいは妊婦様に?

おなかの中の胎児の状態であるが、4D超音波という形で超音波情報をもとに再構築したわけで、直接の写真ではない。おまけに、その時点で外に出てくれば照らし合わせることはできるけれど、おなかの中にいて、生まれるのはもう少し先であれば、当然それから成長するわけで、写真との判定は難しいであろう。

いつの日かその当事者である子供が大きくなって、自分で超音波の写真を見て、これは私の写真であると肖像権を主張するであろうか?現在の超音波の画像印字の方法では、よほど保存をよくしておかないと10年たてば色あせて判別できなくなるかもしれない。それでは当院で採用しているエンゼルメモリーのような形でスマホに動画として残した場合、スマホの記録としてどこかに残せば、動画として保存できる可能性はあるけれど、保存の技術が変わるかもしれないし・・・・。

とはいえ、今の世の中、結婚式の披露宴で、自分の胎児期の写真を披露するカップルがいても不思議はない。それだけ4Dの写真も優れてきたし・・・・。

ま、話のネタに・・・・と。ところで最初の鑑賞しがたい私の写真は、実は、私もようやくマイナンバーカードを取得することにした。そのために自分で撮ったものである。


2020-07-23 05.57.25

水曜日の午後、お産もなかった。意を決して取得に行った。市役所のマイナンバー交付の場所は結構人が多く、にぎわっていた。実は住民基本台帳カードも取得しいるが、これを返納するとは知らなかった。仕方がない、また日を改めて伺おう。

来年にはこれが健康保険証を兼ねると聞いた。またコンビニで各種証明書が発行できるとも聞いた。便利そうではあるが、個人情報そのものがこれにより集約されているわけで・・・・。

 当院は2007年6月に開院し、7月に1名生まれ、8月に8名生まれ、8月に初めての帝王切開となった。予定帝王切開であり、十分に用意をして臨んだ。開業するまでに他施設でお産と帝王切開の経験をしていても、自施設での経験は初めてであり、十分に緊張した。2007年度は65名生まれて、うち10名が帝王切開であった。比率でいえば15%である。

 その後当院での出産数も少しづつ増えて、帝王切開数も増えた。2019年度は、578名の新生児が生まれ、その中に帝王切開は109例あり、比率でいうと18%となる。大体当院での帝王切開の比率はこれくらいの頻度である。ちなみに2019年度の無痛分娩数は164件であり、自然分娩(吸引分娩を含む)は305件であった。

 2019年度の中で、予定帝王切開は64件であり、緊急帝王切開が45件である。骨盤位、既往の帝王切開術などで帝王切開となる人がおおよそ6割であり、残り4割の人は、何らかの理由で急遽帝王切開になったということでもある。そして年間109例ということは、月に8-9例前後帝王切開を行うこととなるので、都合上週に2回前後の帝王切開頻度ということになる。

 帝王切開術の頻度は、2007年度の開業当初は15%、2019年度は18%であり、あまり頻度に差はない。変わったのは、数が増えたことであり、その結果平均で週に2回程度帝王切開がある、という事実である。つまり帝王切開自体がめずらしいことではなくて、そう頻繁にあることでもないけれど、週に2回くらいある、と。

2020-07-19 08.40.23

帝王切開においても、お産においても、私一人でできるはずはなく、スタッフが必要である。誰が何をしてという役割分担が必要である。帝王切開であれば、麻酔担当医、手術の助手、そして手術機械の担当、生まれた新生児の担当、手術の外で、機材の補給をしたり、ガーゼカウントをする外回り、となる。これらには、どこそこのやり方というものであって、その各人の技術が習熟されていないと、どこかが滞り、結果として手術がうまく進行しないこととなる。

麻酔科医、産科医、当院のスタッフの一連の連携によって、手術は安全に滞りなく進められるわけであるが、その時にも、同時でお産が並行していたり、病棟の産後の方、あるいは新生児への対応が並行して進められ、そうした方面のスタッフも必要である。また時には外来も並行して進んでいる場合もあり、外来のスタッフ、そして乳井されている方々のための調理も同時並行であるわけで、つまりこうした帝王切開に限らず、クリニックでお産あるということは、そのための各自のスタッフのおかげでもある。と同時に、私自身の家族(家内・息子)も何らかの形で貢献しているわけで、こうした皆様のおかげで、クリニックの毎日が過ぎていくこととなる。

2020-07-19 08.40.17

写真は、クリニック2階で栽培中のレモンである。すこしレモンらしくなってきた。大きさは3-4cmくらいであろうか。

2020-07-19 08.39.59

果たして収穫できるかな、と。それまでに実が落ちてしまいそうな気もするが・・・。


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